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第2章 すー太郎 いよいよ釣行の巻(後編)

 あれなんて言うお魚なの? あれはワラサじゃもう少し大きくなるとブリという名前になるんじゃ そしてもう少し小さいのがハマチもっと小さいのがツバスなんじゃ、同じ種類の魚でも大きさや地域によって呼び名が違うんじゃ あのワラサも人によってはメジロと言う人もいるんじゃよ。 ふーん面白いね 大きささで呼び名が変わるなんて 僕の呼び名も変わるのかな? はははっ そうじゃなー 男の子は 最初は「僕ちゃん」じゃ 大きくなるにつれて「小僧」「あんちゃん」「若い衆」「おっさん」「じいさん」となるんだよ、女の子は「おじょうちゃん」・・・・「おばあちゃん」なんじゃ ところがな ここまでは男と一緒なんじゃが 女の人は「おばあちゃん」を通りすぎるとな「妖怪」になるんじゃ ぼくちゃんも女の人には気をつけなきゃいかんぞ。 なるほど納得して聞いていたすー太郎は我に帰ると 慌てて おじさん子供に変なこと教えなでよ! パパなにいってんの、そんなの冗談に決まってんじゃん ひさ君の軽蔑の視線を感じたすー太郎は再び竿先に集中したのであった。 お父さん場所変わってよ、僕このおじさんの横で魚つるんだ。老人は嬉しそうに微笑みながらひさ君の竿に生きアジを付けてやり 一言 おまえさんの判断は正しいよ、いい釣り師になるぞ。


ひさ君はすー太郎に場所を変わってもらい、老人の横で竿を出すことにした。
すると、その老人「坊主、ちょっと竿を貸してごらん」
老人はタックルケースの中から何やらゴソゴソと出して、ひさ君の道糸の先につけてやりました。そして、海中につけてある小さなスカリから小魚を出してきて、針に刺した。
「できたぞ、これでやってみるんじゃ」
「わーい、すごい!お魚がピチピチ動いてるよ。それにおっきなウキとオモリだね」
「それは活きアジじゃよ」
「お魚がお魚を食べるの?」
「アジの泳がせ釣りといってな、さっきみたいな青物は生きた小魚に食らいつくんじゃよ」
さらに老人「餌が泳ぎ回るわけじゃから、オモリも大きくせんと隣の人とオマツリになるでな」
「オマツリ?海上釣り堀って筏の上で御神輿を担ぐの?」
「そうだよひさ君、太鼓も叩くんだよーん」とすー太郎。
「ふぉっふぉっふぉ、おぬし等は本当のバカじゃな・・・仕掛が絡むことをオマツリというのじゃよ」老人はひさ君をあざ笑った。
そして、突然真剣な顔つきになった老人「さて、そろそろ放流じゃ・・・坊主、この時が絶好のチャンスなんじゃよ」
「あっ!そういえば朝、船で送ってくれた口の悪いおっちゃんが『10時に放流に来るでな!朝よう釣らなんだら、ほん時頑張って釣ってや!』って言ってましたね」朝乗って来た船の船長さんが言ってたことを思い出したすー太郎が言った。
やがて放流。ボチャン・・・ボチャン・・・お兄さんが魚を1匹1匹生簀に放り込んでくれています。
直後にみんなの竿が一斉に曲がる。
「わー、凄い!みんな釣ってるよ」
「坊主、余所見しとる暇はないぞ!ウキが入っとる!合わさんかー!!」
「えい!」ひさ君は一生懸命アワセを入れました。
ジジ・・ジジジジーーー・・・ドラグが悲鳴を上げる。
「きゃー!凄いよ〜!!どうしたらいいの!?」ひさ君も悲鳴を上げる。
「青じゃー!」老人が突然叫ぶと回りの人達は竿を上げてくれた。
「どうじゃ、今までとは引きとは違うじゃろ。これが青物の引きじゃよ」
「うーーーん・・・重いよーー」ひさ君は竿を持っているだけで精一杯。
「おい、バカ親!手伝ってやらんかー!子供1人では無理ぢゃ。完全に竿をのされとる。まず竿を立てるんじゃー」
さらに「ドラグが鳴って糸が出とる間はリールを巻くでないぞ。ポンピングを駆使するんじゃ」
ひさ君はすー太郎に手伝ってもらいながら大物と格闘している。少し巻いたかと思うと、また魚は糸を引っ張り出す。
「時々、すごい力で締め込むじゃろ?その時によくハリスを切られるんじゃよ。そのためにドラグを使うのじゃ」
・・・しばし格闘中
「そうして粘るんじゃよ。そのうち魚は疲れてくるでのぉ・・・その時がチャンスぢゃ」
しばらく粘っていると、琥珀色に輝く巨大な魚が見えてきた。
「カンパチじゃ」老人が興奮した様子で叫ぶ。
「この魚は釣り堀に放流されとる魚の中でも、シマアジと並んで値打ち物なんじゃ」
「おぬしらのタモはレンタルか・・・それでは小さいじゃろ。わしので掬ってやろう」そう言いって老人は直径60pくらいもある大きなタモを持ってきてくれて、タモ入れ成功。
「わしくらいの域になると、このくらいのタモは必要なんじゃよ、ふぉっふぉっふぉ」
すー太郎とひさ君は、このカンパチとさっきのシマアジを食べて釣り堀に嵌ることになるとは、知るよしもなかった。


「パパの竿も先が動いてるよ」
「おっ、本当だ!」すー太郎はアワセを入れ、ポンピングを駆使して真鯛を上げる。
「だいたい釣り堀というのは朝一番、放流直後がお土産を確保するチャンスなんじゃ。この時にいかに手返し良く釣るかによって釣果によって差が出るといっても過言ではないんじゃよ」
「今日は特別サービスじゃ。釣り堀で釣果を上げるための秘訣をいくつか伝授してやろう」
「じゃが、釣り堀はほとんど魚の取り合いじゃ。わしのようにこれ程まで他人に親切な人がいるとは、まるで物語のようじゃの。ふぉっふぉっふぉ」

@餌を変える
「同じ餌ばかりではダメじゃ。釣れなくなったら餌を変えて、早くアタリ餌を見つけることなんじゃ」

A棚を変える
「魚のいる層(棚)は時間帯、水温、天候など、様々な条件によって変化するのじゃよ。棚を変えてみることも、たくさん釣るためには重要なことなんじゃ」

B誘いをかける
「竿をゆっくり上下に動かしたり、左右に動かしたりした後に食いついてくることもよくあるのじゃ。アタリがなくなったら誘いをかけてみることじゃな」

「以上が釣り堀で数を伸ばすためのセオリーじゃ。あとは仕掛を換えてみたりして、とにかく工夫することが大事じゃよ」
「今日は何から何まで、ご親切にありがとうございます。よろしければお名前を・・・」すー太郎が改まって言う。
「わしか?わしは・・・ヨッシーじい・・・と呼ばれとる。豊田傳八会という釣り倶楽部に入っとるんじゃよ」
「豊田傳八会ですか・・・いかにも凄腕揃いという名前ですね」
「いやいや、それ程でもあるぞ。ふぉっふぉっふぉー(^○^) しかし、普段は農園などしてひっそりと暮らしておるのじゃよ」
そして、納竿10分前・・・
「さて、そろそろ片付ける時間じゃな・・・」ヨッシー爺さんが時計を見ながら呟く。
「あっ、お借りしてた竿もそろそろ片付けます。ありがとうございました」
「ひさ君も今日はよく釣ったね、そろそろ片付けようか。迎えの船を待たせたらスタッフの方や他の釣り客さんに迷惑がかかるからね」
「ひさ君。パパが竿を片付けてる間に、ゴミをまとめて筏にあるゴミ箱に捨ててきて」
こうして後片付けをしていると、迎えの船がやってきた。タックルを積み込み、最後にスカリを船の生簀に入れる。
「おぬしらのスカリはレンタルじゃな。それに黄色い番号札が付いておるじゃろ。その番号を覚えとかんと魚が行方不明になるぞ」
港に到着・・・みんなが荷物を降ろしている
「荷物を降ろしたら、魚を〆てもらうんじゃよ。あそこに若いスタッフがおるじゃろ。そして、荷物と魚を軽トラに積んでおけば事務所まで運んでくれるんじゃよ」
魚をしめてもらって荷物を軽トラに積み込んだすー太郎とひさ君は事務所に歩いて行きました。
「クーラーに魚を詰めないとダメだね。ひさ君、車からお魚用のクーラーボックス出してきて。パパは氷を買うよ」すー太郎は氷売り場に入って行った。
「お帰りなさい。今日はたくさん釣ってみえました?」と氷売り場にいたピンクの長靴を履いた女性。
「これです・・・」おどおどしながら自分のスカリを指差しているすー太郎。
「わーカンパチ釣ってみえたなぁ。お兄さん今日初めて?」
このピンクの長靴の女性、常連さんの顔はよく覚えているが、初めて見るすー太郎に聞いた。
「はい、生まれて初めて釣りをしました。でも釣りって楽しいですね。友達もできたし」
「初めてでカンパチなら凄いよ、お兄さん。それにお友達もできてよかったですね。またここに来ていろんな人と出遭ってね」
魚をクーラーに詰め終えたすー太郎。
「今日はありがとう。また来るよ」そして、ヨッシー爺さんにも挨拶。「今日は本当にありがとうございました。またよろしくお願いします」
「釣り仲間ができるのは良いことじゃ。わしは『釣り堀ファン倶楽部』や『ぶらっと釣りある記』というHPの掲示板やチャットによく出没しておるでの。また覗きに来い、相手してやるぞ。ふぉっふぉっふぉ」
今度は忘れずにひさ君を車に乗せ、家路につくすー太郎でした。
「あっ、パパ!僕、ふんどしのままだよ・・・どうしよう。またテディママに怒られる・・・怖いよ」